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Channel: 西野和馬のオーディオ西方浄土パート2
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C-240あるいは封印されたアキュの謎、、

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下の記事はすべて私の根拠のない愚考および妄想によるものです。ご了承ください。

ちょっといつもとはスタイルを変えて、、

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他界されて30年以上がたつのに今でもその名前をよく聞く、オーディオ評論家が瀬川冬樹さんだ、、2,3年前、ステレオ誌の付録にSMEのアーム調整特集が別冊付録になった。それは瀬川さんが書かれたものを復刻したものだったが、私は、ちょうどその頃、SMEのアームを譲ってもらって四苦八苦していたものだから、これは実に役にたった。そんなことから瀬川さんに興味をもったのだった。

 

 

もちろん、オーディオ道場に無造作においてある大昔のステレオサウンドで何度か彼の記事を読んだことがあったけれど、なかなか美文だと思ったけれど、特に興味を引くものははなかった、、

 

しかし、近年、同誌に掲載された瀬川さんの記事を集めて1冊にまとめたものがリリースされた。書店でぱらぱらめくっていたら結構面白そうなので、購入した、、

 

 

この本の後半、瀬川さんは、さまざまなプリとメインアンプの音の印象について書いている。その中で、彼がアキュのC-240を絶賛している部分があって、レヴィンソンの名器LNP-2Lに比してもまったく劣らないとたいそう高く評価しているのである。

 

特に、ある英国の真空管アンプとあわせたときの音の良さには瞠目し、当時のアキュの音に自分はぞっこんなのだと書き添える、、

 

C-240は1978年の作品で、瀬川さんは81年に逝去されるので、氏の晩年、このプリの音を愛されたということなのである。YOUTUBE上に唯一残された彼の動画では、このプリを操作する姿が残されている、、

 

さて、本プリ関係の情報をネットで閲覧していると、実はこのプリのデザインは瀬川さんその人が担当した、もしくはおおきくかかわっているという記事が少なからず散見され、、なるほど、C-240のデザインは、歴代のアキュの器機の中でも実に異質であり、あとにも先にも同じようなデザインのものはない。コントロールのほとんどはプッシュボタン式であり、回転するものはボリュームとその他2か所ほど、、

 

瀬川さんがデザインに大きく関与したというが、どの程度関わっていたのか、、この特異な、ちょうどその頃、封切られたスターウォーズの宇宙船のコックピットのようなアウトフィットのデザインだけだったのか、それとも音・音質にもくいこんだのか、、

 

実に精緻で美しい文章を書く人だし、そのために実に遅筆だったとのことである。アキュフェーズの依頼を受けて、このプリのプロダクションにかかわったのであれば、瀬川さんの性格や美学からいって、外見のデザインだけで終わるはずはなく、当然、音質についても相当に意見を述べられた違いない。

 

その瀬川さんが、まさに「自画自賛」かもしれないが、このプリの音をこれほど高く、記事で評価しているとすれば、言い換えれば、その音に深く満足していたと言えるのではないか、、、

 

その音とはどういうものなのか、知りたいと思った、、

いろいろな方に聞いてもらったら、以外と早く、C-240は私のもとへやってきた。

 

これまでアキュのプリは相当多くを聞いてきた、C3800、C280VとL C200X C-290Vなどである、、それぞれにいい音だと思ったが、だけどどれも強烈で鮮明な印象は残さなかった、、そして、このC-240。

 

先ずは300BシングルでFALを鳴らす、、玉のアンプの音質やFALのスピーカーの特徴もあるだろうけど、、他のプリに比しても音は大変に澄んで美しいと思った。特にアナログの音は秀逸、、C-280Vでもこんなに強い印象をもたらさなかった、、

 

さらに、過日、設置したファーストワットのアンプに接続して鳴らしたときの音の良さ、、

弦の美しさ、ピアノのインテンシティとはじける音、、ベースの深く沈む音、、音全体に浸透する弾力感あるいは肉体感! まるで、このパワーアンプの相方として専用に作れたのではないかと疑いたくなるほどのマッチングなのだ、

 

こんなふうば自分の様子は、瀬川さんが、マイケルオースティンの玉のアンプと何気なく接続してみたら、その音にとても惹かれたという話に似ているなあと、ひとり苦笑、、

 

瀬川さんは、240を同じアキュのパワーP-400と接続して鳴らした音についても書いているけれど、、それには、少し音が固いが良い音であると、それほど積極的でない評価を書いている、、

 

してみると、、やはりC-240は瀬川さんのプリであったのではないだろうか、、

 

瀬川さんがお元気で活躍中の頃、アキュの社長も出原真澄さんという、やはりこの方も飛び抜けたオーディオファイルで、オーディオ雑誌にも頻繁に登場されていた方だった、、

70年代の後半。オーディオの最盛期。 瀬川さんと出原社長とのお付き合いは間違いなくあったんだろう。それがどれだけ深いものであったか、私に知る由もないが、、この二人の関係が240というプリに結びついたのかもしれない、、

 

パーツの供給が続かないというので、C-240のデザインと音はアキュから永遠に失われた、、また、それ以降、アキュが評論家のだれかを自分たちのプロダクトダザインチームに入れて器機を開発したということは聞かない、、アキュにとっても瀬川さんを招いて、このプリを作ったというのは、まさに特別なことだったのだろう、、

 

C-240誕生かかわるさまざまな事実は今となっては知る由もない、アキュフェーズにとっても、このプリは、特異なもの(突然変異といってよいのか)として、、もしかすると封印したかった異種だったのかもしれない、、

 

それでも、うちはもちろんだけども、少なくない数のこのプリのファンが今も240の美音を愛しつづけている、、

 

以上はネットでの情報など、なにやら根拠のないものからの愚考である、、

 

それでも、このプリは、あるオーディオ評論家とメーカの関係から生まれた、実に稀有でミステリアスな存在であるのだろうと考えるのは面白い、、

 

このプリが音楽を奏で続けるかぎり、46歳という若さで他界した、ある伝説的なオーディオ評論家のかそけきスピリットが音楽の向こうに浮かんでは消える、、、

 

C-240は、実に不思議なプリアンプである、、 今日もこのプリに灯を入れる、、

 

 

                           (2016年11月記)

 


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